経営診断により自らの経営状況を客観的に把握した後は、具体的な経営改善に取り組む必要があります
。そのため、ここでは、様々な場面で経営管理の合理化に取り組んでいる農業経営の実践事例と、合理的な経営管理のためのチェックリストを示しました。経営改善の際の参考として下さい

1.経営管理の合理化の実践事例
【生産管理】
 田植機や自脱型コンバインの1日の処理面積として約1haは少なくとも作業できるようにする。
 団地を一つの単位として捉えて同一の栽培方法を用いたり、同一の品種を作付けたりする。
 田植においては、植付けを担当するオペレーターが作業を最も円滑に遂行できるように補助者は作業を行う。
 家族中心の経営では種類の異なる作業を同時に行ったり繰り返し交互に行ったりするのに対して、雇用労
働力を導入した経営ではその被雇用者に作業を良く理解させるとともに、一連の作業の流れを円滑にし、様々な作業の同時進行や繰り返しを避ける、あるいは作業分担を事前に決めておくといった対応を行う。

 営農集団において誰がどの作業を担当するか、またどのような作業班編成とするかについては、各作業者の作業の遂行能力、特にオペレーターとしての機械の操作能力だけでなく、集団組織の場合には、全体の作業進行の調整や指示を行い得る者の配置に特に留意した作業班編成を行う。
 最も経験豊富な集団の代表者が全体の作業の遂行状況を把握するとともに、各作業者に対して次に実施すべき作業や圃場を指示する。
 収穫時に天候の急変等が予想される時には一つの圃場に複数の台数のコンバインを集中的に投入してその圃場の刈取りを終え、後日その圃場の残りを収穫するために再度移動時間をかけることを避ける。
 作物・品種配置や作業順序の決定等においては、作物の生育特性や各圃場の特徴をできるだけ詳しく把握しておく。
 適切な作業班編成や作業配置を実施していくために、各作業者の能力やそれぞれの実施すべき作業の相互関連を熟知しておく。

【労務管理】
 家族員や同士的な構成員への動機付けについては、機械的に労働内容の評価を行ったり、それを直接給与水準に反映させたりするのではなく、各人の行動による成果や目標達成への貢献度を評価・検討する中で構成員の組織への貢献意欲が高まるようにする。

 構成員の意欲を引き起こすために、機械作業は共同で行うが、栽培管理は地区別に担当者を決め、その者が責任をもって行うというように、栽培管理に関わる労働のみ成果と結び付けて評価するといった対応を行う。

 栽培管理担当者の組合せに関しては、①1人ずつに担当区域を設定する、②作業上の効率性と技術の移転を考えて経験のある年輩者と若年層との2人1組とする、③かつ多数決で採るべき対応策の決定が可能な3人1組とする、などの工夫を行う。

 オペレーターにはそれぞれ専用の機械を決め、保守・点検を各人の責任で行うようにする。

 担当圃場ごとに機械の利用時間や資材の投入量を記録し収量と照らし合わせることで、コスト削減の徹底と競争意識の醸成を図る
 各人がその年の目標収量を提示し、それとの比較でもってその人の栽培管理などの成果を評価する。
 各人が何をやりたいかを設定し、その実績が会社にどれだけ貢献したかという貢献度を評価ポイントとする。

 部門別に販売目標やコスト低減目標を設定し評価する目標管理法を採用する。
 3年間の中期経営計画を策定し、構成員が組織目標を共通して理解できるようにする。
 農繁期が存在することから、弾力的な有給休暇制度の運用を図る。
 長く勤務し経験を蓄積したことに配慮した賃金体系を設定する。

 息子や娘が後継者として経営に参入する場合には、それら後継者への厳密な労働評価、能力評価を避けつつ各人の意欲を引き出す方法として、①経営者と後継者で専門に担当する経営部門を設定し所得も世代に対応させて配分する、②販売代金が振り込まれる通帳の名義を夫婦で別々にする、などの工夫を行
う。

【財務管理】
 農地購入については、年総償還額を一つの目安としたり、経営全体の収支の中で安定的に返済していける水準を目安として年総元利償還額の上限を設定する。

 1戸当たり減価償却費の範囲内に年間の償還元金を収めるという減価償却費の内部金融効果を活用した財務管理を実施する。

 短期資金の調達方法として、①手持ちの現金預金により対応する②定期預金を担保として短期資金を調達する、③支払時期に応じて定期預金の解約、預け入れを繰り返す、などの工夫を行う。

 営農集団における財務管理として、組織が解散しても即時に借入金を返済し構成農家に負債を残さないという観点から、機械施設等に関わる借入金額に等しい自己貨幣資本の確保を理想に財務状況を整備することとし、当面は50%をメドにそれを準備する。

 売上高に占める人件費の割合や支払い利息率、宣伝費率、あるいは固定長期適合率等の財務指標に関する合理的な管理の目安として例えば、売上高人件費率については30~40%、あるいは売上高宣伝費率4~5%といった数字を一つの目安として設定する。

【販売管理】
 販売競争に勝ち抜いていくためには常に自分の生産物の商品イメージをいかに高め、また、どのように独自性を打ち出していくかが重要となることから、①作物の栽培方法を工夫し、その栽培方法のアピールと併せて生産物を販売する、②該当する商品だけでなく村でとれる産物も同封し農村および自然のイメージも併せて消費者に届ける、さらに③生産の過程から消費者と生産者が交流し、商品に加えて、「健康」や「食」あるいはイベントに関わる情報も提供していく、などの工夫を行う。

 広範囲に商品の宣伝を行い自ら受注していく場合には、何時来るか分からない不特定多数の顧客からの電話注文を受付けるために適切かつ正確な対応能力を持った者を常時そのために確保しておかなければならず、家族員等構成員への負担が急速に増大するといった問題が発生することから、そのような事態に対しては受注代行会社を活用する。

 製品の販売活動が活発になり、その販売金額も増大していく中で適確な販売対応を実施するために、①販売活動時の顧客との交渉の際に権限を担当者に委譲できるように、例えば組織を農事組合法人から有限会社へ変更するなど販売活動に適した企業形態を選択する、あるいは、②販売対応の専門能力を有す
る者を雇用していく、③代金決裁において顧客が振り込み等を行い易い金融機関をメーンバンクとして設定する、などの工夫を行う。

 代金回収を確実に行っていくために、①未払者には内容証明郵便等により督促状を送付する、②代金引換による商品配送とする、③代金前払方式とする、④預金口座からの引き落としを依頼する、⑤大口の販売先については信用調査を行う、⑥初めての取引先の場合には実際にその取引先を訪ねた上で販売を
行う、などの対応を実施する。

【顧客管理】
 農地貸借においては、借地圃場の畦畔の草刈りや水路の清掃は丁寧に行う。

 特に他集落の水田を借入れた場合には、借地圃場の地権者のみならず、その地域の農民への配慮を怠らないようにする。

 地権者への対応として、①借地圃場も含め転作には積極的に取り組む、②借地圃場の返還を求められた場合には直ちに返す、③借地圃場の稲が収穫適期以降も遅くまで残るといった事態を避ける④圃場の位置や地権者の状況によっては水管理等の作業を地権者に再委託し老人等への就業機会を提供する、な どの工夫を行う。

 作業受託における委託者への対応として、①委託者の圃場は作業期間のうちのできるだけ適期内に作業を実施する、②作業を依頼されたら自らの経営地の作業の都合にかかわらずできるだけ早く作業受託地の作業を優先して行う、③委託者に対する技術指導も要請されれば行う、④作業は特に丁寧に実施する、などの配慮を行う。

 規模拡大が進み地権者や作業委託者の数、あるいは借地圃場数、受託圃場数が増加する場合には、コンピューター等を用いて地権者や委託者別に圃場数や圃場別の面積、借地料、受託料金、あるいは借地料や作業料金の支払い・入金状況といったデータを整理する。