農場⽣産⼯程管理とは

1 これからの農業経営管理

農業が持続的に発展するためにも、以下のような社会的関心の高まりに対応した取り組みが求められます。

◆ ⾷品事故等を背景とした⾷品の安全性に対する消費者意識の高まり
(⾷の安全確保)
◆ ⽔質や⼟壌の保全、地球温暖化の防⽌など環境意識の高まり(環境保全)
◆ 自己及び他⼈への事故防⽌等、安全な農作業への意識の高まり
(労働安全の確保)
◆ 上記に関連する法令や指針等の遵守(法令遵守)

また、今日の農業経営は、規模拡大や企業化が進み、経営内容が大きく変化してきています。そして、以下のような要因が、農場管理を複雑化させ、農業経営の改善や効率化の妨げとなっています。

◆ 経営面積拡大にともなう圃場数増加
◆ 消費者ニーズの多様化やリスク分散に対応した作付品目拡大
◆ 規模拡大や事業拡大にともなう従業員数の増加

今後の農業経営の発展には、上記のような社会的関心、経営内容の変化に対応しながら、経営改善を図っていく必要があります。そのためにも、これまでのように経験と記憶による農場管理ではなく、記録と点検に基づいたより高度な⼯程管理が必要となります。

2 注目されるGAP(農業⽣産⼯程管理)の取り組み


現在、⾷品安全や環境保全、労働安全等の実現を図ることを目的とした「農業生産⼯程管理(GAP:Good Agricultural Practice)」の取り組みが推進されています。

■ 「農業⽣産⼯程管理(GAP)の共通基盤に関するガイドライン」
農林⽔産省では、2010年に「農業生産⼯程管理(GAP)の共通基盤に関するガイドライン」を⽰しました。そこでは、⾷品安全や環境保全、労働安全など農業生産活動を⾏う上で必要な関連法令や科学的根拠に依拠し、農薬や肥料の使用、⼟壌の管理、危険な作業の把握など⼯程管理(正確な実施、記録、点検、評価)の実践において、特に奨励すべき事項を⽰しています。

■ GLOBALGAP
GLOBALGAP(旧EUREPGAP)とは、欧州小売業協会により創設されたGAP認証制度
で、⾷品安全、環境保全、労働者福祉、動物福祉に関する管理項目が定められています。
欧州小売業協会加盟の小売店では、GLOBALGAP認証を仕入れの基準としていることから、欧州のみならず、欧州向けに輸出を⾏う国や地域でも幅広く普及してきており、GAPに関する事実上の国際規格となっています。

■ JGAP
JGAPとは、NPO法⼈日本GAP協会が普及・推進するGAP認証制度です。JGAPは、
農林⽔産省「GAPの共通基盤に関するガイドライン」に対応すると同時に、⾷品安全や環境保全、労働安全に関してより細かなチェック項目を定めています。また、JGAPで は取組内容の適合性について第三者機関による審査・認証が⾏われています。

■ 都道府県GAP、JAグループGAPなど
都道府県や各産地において、それぞれの目的(地域農産物のブランド化など)や地域の実情に応じて、独自のGAPを作成・取り組むケースもあります。

3 農場⽣産⼯程管理が目指すもの


■ GAPの取り組みは、計画や記録、点検による改善活動を基本に、⾷品安全、環境保全、労働安全等の実現を図ることを目的とします。
しかし、そうした改善活動の取り組みは、⾷品安全、環境保全、労働安全等の目的だ
けにとどまらず、適用範囲を広げ、適切な管理を実践することで、より広い意味での
経営改善効果を発揮する可能性を秘めています。

■ 「農場⽣産⼯程管理」では、GAPの取り組みを上⼿に活⽤することで、管理の複雑
化する農業経営に、新たな経営改善効果をもたらすことを目指します。

農場⽣産⼯程管理が目指すもの

従来の生産管理GAP(農業生産⼯程管理)新たな農場⽣産⼯程管
⾷料の生産・供給社会的関心の高まる
⾷品安全、環境保全、
労働安全、法令遵守 等
の実現
圃場数や作付品目、従業員数の
拡大にともなって複雑化する
農業経営において、経営改善や
効率化を実現
経験と記憶による
管理
農薬や肥料の使用、⼟壌の
管理、危険な作業の把握等
各⼯程の正確な実施、記録、
点検、評価の実践
GAPをベースとした新たな
改善活動

 

農場⽣産⼯程管理と経営改善効果

1 GAP導入による経営改善効果
GAPに取り組む経営では、さまざまな経営改善効果が得られています。

■ JGAP認証農場を対象としたアンケート
調査(2012)では、GAP導入によりさまざまな改善効果が発揮されていることが明らかとなりました。
■ なかでも、従業員の意識は7割近くの農場で改善が図られています。
■ また、「資材の不良在庫の削減」や「生産販売計画の⽴て易さ」、「品質の向上」は半数近くの農場で改善がみられ、販売の改善や収量向上、コスト削減等も3割前後の農場で改善がみられます。

2 経営改善の発揮には従業員の意識改善が重要
GAP導入による経営改善効果の発揮 には、順序関係があります。

■ GAPの取り組みは、まず従業員の意識改善をもたらします。そして、従業員の意識改善は、計画的生産の実現をもたらし、そのことが品質の改善、ひいては販売の改善をもたらしています。
■ 言い換えれば、経営改善には、その根底にある従業員の意識改善がとても重要となります。

3 継続的に取り組むことの重要性
改善効果には、GAPを継続的に取り組む ことで発揮されるものがあります。

■ 従業員の意識改善は、GAPの取り組み年数に関わらず、高い効果が発揮されます。
■ ⼀⽅、品質の改善やコスト削減は、GAPの取り組み年数が⻑いほど、高い効果が発揮されます。
■ したがって、品質の改善やコスト削減等の改善効果を実現するには、改善活動に継続的に取り組むことが重要です。

4 記録に基づくPDCAの実践
改善効果のいくつかは、各種記録に基づ く改善活動(計画、点検、改善)の実践 によって高い効果を発揮します。

■ 生産活動の計画・点検・改善において、生育データを活用するケースほど、単収や品質の向上、生産コストの削減等に高い改善効果をもたらします。同様に、栽培履歴に基づく改善活動は、品質の向上や従業員のさらなる意識改善をもたらします。
■ 各⼯程で記帳したデータは、単なる記録にとどめず、改善活動に積極的に利用することが重要です。

5 従業員を交えたPDCAの実践 改善活動(計画、点検、改善)における
従業員の参画は、従業員の意識改善や計画的⽣産の実現に効果的です。

■ GAP導入後、生産活動の計画・点検・改善において、新たに従業員等が参画したケースでは、従業員の意識改善や計画的生産の実現、コストの削減等に高い改善効果が発揮されています。
■ とくに、従業員の意識改善がさまざまな改善効果に影響を及ぼすことを踏まえれば、従業員を交えた改善活動の体制整備は重要です。
■ 実際に、農作業を⾏う従業員の意⾒やアイデアを反映させる改善活動、また、そうした場を通じて、農場の⽅針や問題点を従業員間で共有することが大切です

解説 PDCA(PDCAサイクル)とは
PDCAとは、PLAN(計画)→ DO(実⾏)→ CHECK(評価)→ ACT(改善)を繰り返し実施することで、経営活動を継続的に改善することを指します。 PDCAの考え⽅は、⼀般製造業等の品質改善や業務改善に広く用いられ、ISO等のマネジメントシステムにも取り入れられています。

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